寄せされたお言葉

上映会を通じて頂いたご感想

渡部 実 さん (映画評論家)

 「オオカミの護符」とは珍しい題名である。この映画の冒頭は神奈川県川崎市宮前区の土橋という地域の紹介から始まる。語り手でもある本編の製作者、小倉美恵子の生まれた故郷である土橋にはまだ竹やぶが残されており、氏の幼女時代の写真には彼女の亡き祖父の姿も認められる。写真が写された時代は家の周辺にも牛が飼われ、竹やぶも多く繁っていた。土橋地区には豊かな自然があり、農業が営まれていたのである。しかも昔から、古い土蔵の扉にはお札が貼られているという。実際、画面にはお札に記された文字とともに動物の姿が描かれている。それは地元では「狗さま」といわれるヤマイヌ、ニホンオオカミであり、この地域では土蔵の扉や台所にお札を貼る風習がもう265年も続いている。

 このお札は、東京都青梅市の武蔵御嶽山の御嶽神社が発行しているもので、神社には毎年、土橋の代表者が参拝し、新しいお札をいただいてくるという。小倉氏はこの「狗さま」が見守ってきた農民の暮らしを、自分の生まれ育った地域から辿ってみるという思いを抱く。

 取材は冒頭から実写や航空写真によって現在の土橋と60年前の土橋を比較し、その違いを比べるところから始まるが、この映画の注目すべき点は、取材がお札の存在をめぐって土橋、馬絹、武蔵御嶽山、東京都調布市、埼玉県三芳、秩父といった各地にまで領域が広がり、一口にお札といってもそれこそ、地域によって様々な個性ある神事、行事から由来していることを丁寧な映像記録から捉えていることである。

 映画は終りに、再び小倉氏の故郷、土橋に戻って来る。一見すると昔の竹やぶの風景とは異なり、現代的な建物が多くみられるが、薪の木を切る雑木林の「べーら山」に取材して、そこに居る古老の話を紹介。そこであらためて氏自身の家も歴史的に見れば、自分たちで作った農作物にお供えする家系であったことが語られる。現代の日本列島においてニホンオオカミは絶滅したといわれているが、それでもなお、関東の農民たちは「狗さま」を手ずから摺り、ほこらにありがたく収め、家の近所に貼っているという。

 この映画は関東一円に今も伝わる“護符”の存在を現代人にも改めて教えてくれた。長い歴史の中で黙々と続く伝統である。“護符”によって人は生かされているという思いも感じられた。

(キネマ旬報 2008年7月下旬号より)

『オオカミの護符』 支援団体

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製作・配給:(株)ささらプロダクション

共同製作:(株)環境テレビトラスト 
     「オオカミの護符」製作委員会

支援 : 文化庁

後援 : 川崎市・川崎市教育委員会

協賛 : セレサ川崎農業協同組合
      土橋町内会
      (有)有劦設計
      (株)サメジマコーポーレーション
      (有)大倉商事

協力 : 宮前区観光協会
      たまフォーラム
      川崎土橋郵便局
      東京急行電鉄株式会社

制作協力: グループ現代
        民族文化映像研究所

撮影協力: 土橋御嶽講中
        馬絹御嶽講中
        寶登神社氏子中

        武蔵御嶽神社
        寶登山神社
        猪狩神社
        三峯神社

        国立歴史民俗博物館
        青梅市郷土博物館
        川崎市立土橋小学校
        たましん地域文化財団
        武州御嶽山御師家
           古文書学術調査団
    (法政大学/青梅市教育委員会)
        宮前平ハイデンス
        コトー宮前平

ス タ ッ フ

監督 : 由井 英

製作 : 小倉 美惠子  小泉修吉

撮影 : 伊藤碩男     由井  英

音声 : 河合樹香

助監督: 中嶋美紀

音楽 : 姜 小青(中国古箏)
      千島幸明(篠笛)

ナレーター: 糸 博

語り : 小倉 美惠子

題字 : 永田 紗戀

版画 : 小林 奈那

編集/録音: アクエリアム

上映スタッフ: 吉江 志づか  大江純恵

デザイン: 熊澤正人+内村佳奈
        (POWER HOUSE)
      岩井友子

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『オオカミの護符』 上映情報!

上映会の情報はこちらから ↓ もちろん映写機です!.png

次回作のお知らせ!

「オオカミの護符」に続き、ささらプロダクション第2作目「宮前の講(仮題)」を財団法人トヨタ財団の助成を受け、現在、制作中。
 詳細はブログををご覧下さい。